少したのしい



Intoroduction

なんだ
かんたんじゃないか
歩けばいいんだ
変わりたければ
この町を


石黒秀和
(演出家・とよた演劇アカデミー副実行委員長)


なんと今年のM.I.F.映画は2本同時製作!

『箱』『カササギの惑星』に続く2008年製作の2本の内の1本が『少したのしい』。

企画・脚本はこれが初脚本となる伴野紀子。
監督・撮影は『箱』の清水・岩松コンビが再登板。この2人以外の技術スタッフは、ほとんどが初のメイン担当となるフレッシュさ。

その他は衣装、ヘアーメイク、グラフィクデザイン等がM.I.F.メンバー外のつわものを招へいして、がっちり脇を固める。

キャストも、バーサスプロダクションとM.I.F.オーディション参加者をメインに、M.I.F.作初出演がずらり。
女子高生2人が、豊田市内を北から南に徒歩で旅をするロードムービーのため、ロケ地は花本町の田園風景から豊田高専、豊田市駅前コモスクエア、白浜公園、下山地区、水源町、広美町水車公園、天神橋付近など市内22ヶ所にも及ぶ。

さあ、新しい挑戦の向こうに何が見えるのか!?


あらすじ

歩子とひかりは幼なじみの女子高生。田舎から街中の進学校に入学したけれど、2人は、なんともいえない孤独を感じていた。

いよいよ始まった夏休み初日、ひかりは「飽きたーー!」の叫びとともに大変身。「私を求めてる人を探しに行く!」とずんずん歩き出すひかりと、しかたなくそれに付き合う歩子は、徒歩で小さな旅にでる。

旅の途中で遭遇したチョー変な人たちとの出会いの先に2人が辿り着いたのは・・・。

可笑しくてたのしくてちょっぴり切ない青春ロードムービー。


Cast

橋口ひかり(ぴこ) / 水野 晴子 (バーサスプロダクション)
バーサスプロダクション所属。テレビCM、雑誌等出演歴多数。学生製作による自主製作映画出演歴もあり。

谷村歩子(ぽこ) / 真野 こころ (バーサスプロダクション)
バーサスプロダクション所属。テレビCM、雑誌等出演歴多数。本格的な演技は本作が初めて。

就活女性 / 矢野 槙貴子
舞台出演から活動をはじめ、最近ではM.I.F.第2作『カササギの惑星』、小坂本町一丁目テレビ内ドラマ『鞍ヶ池ラヴァーズ『渡刈の晩ごはん』とM.I.F.作の常連女優となっている。

デビューを目指すおばさん / 工藤 明香
名古屋を中心に舞台で活動し、内田藍子演出『ゆめ・夢のあと』、麻創けい子作・演出『元禄芭蕉絵巻』など多数の舞台出演歴あり。2009年3月13〜15日には麻創けい子作・演出『夕空はれて』に出演予定。

トオルちゃん / 望月 達磨

本屋のおじいさん / 近藤 博
豊田を中心に20年以上のキャリアがあり、最近では劇団ドラマスタジオ『泰山木の木の下で』に出演。2009年3月8日には、とよた演劇アカデミー修了公演『春の香と陽の光〜ハルノカヲリトヒノヒカリ』に客演予定。

おじいさんの娘・姉 / 古川 智子
現在、とよた演劇アカデミー所属。2009年3月8日に、とよた演劇アカデミー修了公演『春の香と陽の光〜ハルノカヲリトヒノヒカリ』出演予定。「ダンナあり、一児の母です。身内には迷惑かけますが、これからも好きに生きていきますっ!!」

おじいさんの娘・妹 / 久美子

営業途中のサラリーマン / 小橋 和也
井戸屋のおばあさん / 柴田 槇子

男性教師 / 一麻
女性教師 / 清水 美佳
佐伯さん / 荒木 由美子
同級生 / 福原 千夏 (バーサスプロダクション)・詩帆

女子生徒 / 
高橋 小百合 (豊田高専演劇部)・安藤 祥子・吉村 唯花 (バーサスプロダクション)・長谷川 知美 (豊田高専演劇部)
男子生徒 / 中川 雄貴 (豊田高専演劇部)

すれ違う男子校生 / 
内藤 慎哉・上地 貴文 (豊田高専演劇部)・安藤 駿 (豊田高専演劇部)
犬の散歩をしている主婦 / 大竹 尚美
歩子とひかりがすれ違う人々 / 多数

※名前の後ろの所属名がないキャストは、M.I.F.のオーディション参加者。


Staff

監督・脚本 / 清水 雅人
2000年より映画製作を始め、『公務員探偵ホーリー2』が第6回インディーズムービーフェスティバル一般部門10位入賞、福井インディーズ映画祭観客賞受賞ほか、『箱』が宝塚映画祭入選、イメージフォーラムフェスティバル2008名古屋プログラム特別招待上映。
映画製作の他にテレビ番組「小坂本町一丁目テレビ」(CATVひまわりネットワークにて放送中)製作出演、ラジオ番組「小坂本町一丁目ラジオ」(エフエムとよたラジオラブィート78.6MHz放送中)パーソナリティ、とよた演劇アカデミー実行委員・講師等務める。M.I.F.代表

企画・脚本 / 伴野 紀子
2006年M.I.F.への参加を機に脚本執筆をはじめ、小坂本町一丁目テレビ内コーナー『それいけ!チャン』、同テレビ内ドラマ『渡刈の晩ごはん』第2話、第9話の脚本を手掛ける。映画脚本は本作が初めて。本作の企画も伴野のもの。M.I.F.メンバー。

助監督 / 川口 純
小坂本町一丁目テレビ内ドラマ『渡刈の晩ごはん』第4話脚本・監督を経て、本作では助監督・ラインプロデューサーとして参加。総出演者40名、スタッフ25名の撮影隊による豊田市内25ヶ所に及ぶロケ撮影を切り盛りした。M.I.F.メンバー。

撮影 / 岩松 顯
学生時代から映画製作を始め、監督作が数々のコンテストで受賞。近作では、『IMOMUSHI』がシネクエスト映画祭2006 ヴュアーズ・ボイス・コンテスト招待作品シネクエスト・2006観客賞、イメージフォーラム・フェスティバル2006 イメージ・ワンダーランド 名古屋特別プログラム招待作品、『昨日の町で、』がSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2007短編部門正式ノミネート、第10回インディーズ・ムービー・フェスティバル短編部門入選、山形国際ムービーフェスティバル 2007 正式ノミネート。
撮影は、『箱』につづいて再び監督清水とコンビを組んだ。M.I.F.メンバー。

照明 / 國武 清隆
『箱』、『カササギの惑星』での照明助手を経て本作で照明のメイン担当に抜擢。小坂本町一丁目テレビ内ドラマ『渡刈の晩ごはん』では出演も果しコミカルな演技を見せる。M.I.F.メンバー。

録音 / 秋山 勝成
小坂本町一丁目テレビ内ドラマ『渡刈の晩ごはん』3話脚本・監督、第9話の監督を経て、本作では録音として参加。ラジオ番組「小坂本町一丁目ラジオ」(エフエムとよたラジオラブィート78.6MHz放送中)パーソナリティも務める。M.I.F.メンバー。

衣装 / 鈴村 阿記  小田 未郷
美術・小道具 / 菊地 宏枝

ヘアーメイク / kumi
アメリカにて美容学校に通いカリフォルニア州認定マニキュアリスト試験合格、マッサージ学校に通い各種マッサージセラピストの認定書取得、再び美容学校に戻り、カリフォルニア州認定エステティシャン試験合格。試験合格後、C.I.D.E.S.C.O ディプロマ取得。アメリカの各サロンで、ヘッドハンティングされながら勤務。帰国後日本のサロン勤務経験を積んで、現在、岡崎市内にてサロン「ピーチェリーノ」をオープン。

記録 / 中山 由香里
2007年M.I.F.へ参加し、『カササギの惑星』では館内アナウンスを担当する。本作では記録として参加。助監督のサポートも行う。M.I.F.メンバー。

編集 / 清水 雅人
撮影助手 / 宇野 大輔
照明助手 / 成瀬 裕平
録音助手 / 岡根 智美
進行 / 鈴木 牧穂  渡辺 美穂

音楽 / kaname  清水雅人
挿入曲『Flavor』 kaname
エンディング曲『プリズマティック-2008ver-』 Satin Dolls
2006年より名古屋を中心に活動を始め、COLLEGE ROCK FESTIVAL 07全国大会審査員特別賞、The 1st Music Revolution東海北陸エリア決勝 in Zepp Nagoyaグランプリ等数々のコンテストで受賞。2008年11月に個々の活動充実のため惜しまれながら解散。
hompage http://satindolls.info/pc.html

グラフィックデザイン / 鈴木 大和(ヤマトデザインオフィス)
名古屋学芸大学メディア造形学部デザイン学科、同大学大学院メディア造形研究科卒業。屋外広告学生デザインコンクール2007入選、FUKUDAポスター大賞2006 佳作など多数の受賞歴あり。
現在はフリーランスとしてグラフィックデザインを中心に幅広く仕事をしている。小坂本町一丁目映画祭Vol.7のチラシデザインも手掛ける。

衣装協力 / maison de chibico
ブリーダー / 紙谷 ともえ
メイキング・サイト製作 / 伴野 悠吏
スタッフ協力 / 
古川 良則 原田 健太郎 亀井 英樹 川合 智海
大橋祐一郎 堀 芳樹 鈴木 琴恵 竹内 宏司

製作 / M.I.F.


協力

ロケ地協力
豊田工業高等専門学校
原田屋
挙母神社
川口家

協力
バーサスプロダクション
豊田高専演劇部
株式会社STUDIO i
プランニングオフィスf
劇団ドラマスタジオ
横田久美子
高見正成

協賛
City Cafe
八光流柔術遊心会名古屋支部
ハープ教室スタジオワン
土地家屋調査士・測量士「岡本邦治(ひではる)事務所」
Honda Cars三河豊田挙母店
NOEVIR豊田販社(エスポワール)
collabo plus(コラボプラス)
Peacherino International Skin Care & Day Spa(ピーチェリーノ)
三河初!地域ブログ「ブーログ」!
RICKEY'S(リッキーズ)
ラジオ・ラブィート
旬菜旬肴きらり
FORESTA HILLS Hotel Foresta & Sports Club
紫翠閣とうふや
飲み喰い処ろく
alex republic
BALSE
ブーケ・デ・トーン音の教室
Elan
蕎麦つちや
四季あじ暦山路


レビュー

豊田地域で活躍し、M.I.F.を応援してくださっている方々から『少したのしい』のレビューをいただきました。

石黒秀和(劇作家/とよた演劇アカデミー副実行委員長)

なんだ
かんたんじゃないか
歩けばいいんだ
変わりたければ
この町を

 

 

池田美樹(エフエムとよたラジオラブィートスタッフ)

学生時代、わたしは、「自分の存在価値」みたいなものについていつも考えていました。集団の中に入れば入るほど、孤独でした。

「大人は楽しいですか?」
ある日、学校の先生にこんな質問をしました。

「楽しいとは限らないけど、生きがいはあるよ。」
先生の言葉の意味が分かりませんでした。
楽しくないなら、大人になんてなりたくないと思いました。

映画を観ていたら、そんな甘酸っぱい青春時代を思い出しました。
大人になった今、先生の言葉の意味が少しずつ分かってきました。
でも、まだまだ旅の途中です。

 

 

亀田恵子(Arts and Theater →Literacy代表)

透明な夏の1日。−M.I.F.『少し楽しい』−
 映画が苦手である。普段は現代アートやコンテンポラリーダンスといったものについてレビューを書いていることが多い私にとって、映画は「情報量」が多すぎる気がして疲れてしまう。映画館で2時間ほど過ごして劇場から出てくると「お腹がいっぱい」のような感覚に陥ってしまう。映画には1コマごとにさまざまな意図が込められている。全体とのバランス、役者の魅力、ストーリーを展開する順序など、そこには観客には見えない部分での膨大な仕事量が秘められている。照明、カメラワーク、音響…映画は多くの技術の結晶だと言えるし、関わる人間の数も1人や2人ではない。チームワークが必要になってくることは言うまでもない。そんな“ぎゅっ”と圧縮された世界が映画だと私は思っているので、つい逃げ腰になってしまうのだ。日常生活にも情報はあふれているから、もうこれ以上は「ごちそうさま」と思ってしまう。もちろんこれは私の個人的な感覚なので、多くの人に共通の感覚ではないと思う。映画が悪いわけではない。

 そんな私であるが、先日M.I.F.の清水雅人監督から「今度、上映する作品があるので感想を書いてほしいのですが。」と1本のDVDが郵送されてきた。彼の前作『箱』(2007年)について稚拙ながらレビューを書かせていただいた関係で依頼をして下さったのだろう。メールでは「拝見しまーす。」と返信したものの、上記の理由でなかなか開封に至れない。申し訳ないなあと思いつつ数日が過ぎ、いよいよ見なくてはと思い立ったのは大阪の実家に帰省していた日の朝だった。

 冒頭、作品は夏休みを迎える教室からはじまる。先生から成績表を受け取り、個人面談をするシーンへの切り替えは清水監督らしいテンポの良さを感じた。映画の中でどうシーンが展開していくかを見るのも映画を楽しむ方法の1つだと思うが、ここは作品を洗練されたものにするかどうかの分かれ道でもある。前作の『箱』でも人物が1対1で向かいあう構図が見られ、主人公のみさえが自らの人生に立ち向かっていく決意のようなものを感じたが、今回の『少し楽しい』でもひかり(ぴこ)と歩子(ぽこ)が自分の気持ちと学校生活(未来を含めるなら人生)とのはざまで悩む姿が提示されていたように思う。みさえとひかり・歩子は世代が違うが、「自らの人生に対して向き合う」という点では同じである。清水監督の作品制作の視点がここにうかがえる。  
また、地元の豊田市の風景を美しくストーリーに取り込んでいる手腕はやはりすばらしい。豊かな自然をふんだんに用い、サッカースタジアムなどの近代的な建築物、商店街などもモチーフにしていく。見なれたはずの景色がフィルムの中で鮮やかに生まれ変わっていくさまは、地元でつくられる自主制作映画ならではといえるだろう。現代アートにはアーティストインレジデンスという考え方がある。その土地で暮らしたことのないアーティストを町に招致し、その土地に長期滞在をさせて作品制作をするものである。そこから生まれる作品は、第三者の視点で新たに描き出される町の姿であり、そうした視点の提供によって住民に自分たちの町の魅力を再認識してもらうという機能がある。自主制作映画には、ずっとその町に暮らす映画人たちがその役割を担っているという点がとても興味深いと思う。

 上演前のテキストなので、あまり多くを話すことは控えなくてはならないが、今回の『少し楽しい』は10代の少女たちの瑞々しい感性を切り口に「生き続けていくこと」への疑問と向き合い、自分らしく越えていこうとする姿が描かれているといえるだろう。その「自分らしく」という部分は、ぜひ作品を見て感じていただきたいと思う。

DVDプレイヤーの電源を切りながら、私は観終わったばかりの作品について清水監督へ打つメールの内容を考えていた。「映画は苦手だ。」まずはそこから書きはじめようと思った。「仕事で疲れた頭にも、この作品はサラリと楽しめますね。ぜひ続きが観たいです。」そう伝えようと思った。そして、締めくくりには「映画も悪くないですね!」という言葉で終わろうと。


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