『箱』の製作過程を話します メインスタッフ座談会

参加メンバー

監督:清水雅人
撮影:岩松 顯
照明:古川良則 
ラインプロデューサー・録音:石川登美二
ロケ地交渉・進行:堀 芳樹
助監督:伴野悠吏 
主演:近藤美由紀

撮影も編集も終えた頃、『箱』についてしみじみお話ししたわけです。

清水 今日は『箱』の試写1号が完成してメインスタッフのみなさんに見てもらって、とりあえず一区切りということで、「こうやって作りました」という製作過程を紹介できればと思って座談会形式で振り返りながら話をしようと思います。

シナリオについて

清水 今回は、スタッフ体制を作りながらと製作を一緒にやっていった感じなので、まだ今の体制の姿かたちが何もない段階で、僕が書いた初稿だけがあった。
で、「書いたはいいけど撮れるのかな」と思ってたちょうどその頃岩松さんと出会って家に遊びに行って撮影をお願いすることになって、初稿を送ったのが6月上旬ですね。それで、古川さんと石川君を含めて、4人でシナリオ練りましょうと集まったのが6月末です。ここで、新団体「M.I.F.」を立ち上げてやっていこうという話になった。名前はまだついてませんでしたけどね。
シナリオは何稿まで書いたんですっけ?第9稿ぐらい?
石川 いや、9稿があって、そこから決定稿になって、10か11までいってますよ
岩松 10稿が一応決定稿だったけど、そこからリハーサルしてまた書き直してたじゃない?だから11稿が決定稿だよ。
清水 たくさん書き直しましたねぇ。
岩松 途中で、僕と石川君も書いてますからね。別の目で書き直してみようということになって。石川君は何稿目を書いたんだっけ?
石川 3稿が岩松さんで4稿が僕ですね。
岩松 その後、僕はもう1回書いてるからね。
清水 6月末からはじめて8月末までで一応あげましたから、毎週コメダに集まって、その度に新しい稿が出来てた感じですね。
岩松 1回は、うちの地下室にこもってやったねぇ。朝から夜まで缶詰になって。
石川 やりましたね。
清水 当初と決定稿では、ラストが一番変わったのかな。
岩松 当初は、ラストどうだったんだっけ?
清水 杉本が家に帰ってきて、夫と話すところで「離婚しましょう」て言って、夫が「嫌だ」って言ってたんです。
岩松 この前、夫役の山田さんが言ってたよ。最初シナリオ読んだ時「なんだ?結局離婚するのか?」って思ったって。
伴野 救いがないって?
岩松 そうそう。
清水 ただ、監督としては、完成形の今でも、夫婦が元の鞘に納まったというつもりはないんですけどね。やっと、向き合って考えてく地点に立ったという、この先どうなるかはわからない、やっぱり離婚するかもしれないし、幸せになるかもしれない、というところで終わらせたというか。
近藤 私は、主人公が、現実を受け入れて、我慢して生活していくっていう終わりだと思ったけど。
清水 相変わらず美由紀ちゃんは独自の解釈をするねぇ。それじゃあ、嫌な映画じゃん(笑)
岩松 全然成長してないじゃん、成長どころか後退してる(笑)。
俺は、元の鞘に納まったのは納まったんだけど、今までとは違う新しい2人の関係性を持ってやっていきましょうという終わりなんだと思ったけど、違ったのか?
清水 違ってはいませんよ、その辺は観る人それぞれで解釈してくださいっていうことです。でも、こんなにシナリオ書き直したのは初めてでした。
岩松 話が変わったことよりも、清水監督自身が、書き直したり、僕たちを説得しながら、自分が描きたいことを見つけていったことに意味があった思う。それが演出にも役立ったと思うし。
清水 そうですね、見えてきたというか、初稿の段階ではよくわかってないんだけど「でもこう動くんです」って部分の根拠付けが出来てくるというか。
岩松 あと、石川君のまじめさというか人間性がよくわかったということもあったねぇ。そもそも不倫を描いていいのかって、不倫を勧めるような映画を作っていいのかって石川君は言ってた。
石川 そんなこと言いましたっけ?
岩松 言った、言った、すごい憶えてるもん。
石川 失業保険のことを言ったのは覚えてますけど。
岩松 そうそう、とりあえず失業保険でゆっくりします、ってセリフは、社会的によくないってのも言ってた。
石川君はピュアなんだよ(笑)。
岩松 本当に、石川君はすばらしい人だって思ったもん、本当に、冗談じゃなくて。そこが一番印象に残ってるかな、映画とは全然関係ないけど(笑)。
石川 そもそも恋愛ものは好きじゃないってのはありますけど。
岩松 そうそう、根本的に好きじゃないって言ってたよ(笑)。
  シナリオ
伴野 岩松さんと私は、もっと杉本を苦境に立たせないといけないって言ってましたよね。
清水 途中で、伴野さんと深澤さんにもシナリオ会議に入ってもらって意見を聞きましたね。主人公を最後に泣かせよう、ってのもそこで出てきた。
岩松 主人公が泣くところまで持っていくように、構成しなきゃってのは言ったね。でも、清水さんはそういうの好きじゃないってのもわかった。そういうの避けて避けて直してきたもんね。
清水 いや、自分としてはかなりがんばったつもりですけどね。でも、見た目にはなにも変わってないというリアルさも欲しかったというか。現実には、そうそう問題って外在化することなくて、変わらない日常が過ぎてるように見えるもんだと思うので。
石川 どうしても聞きたかったんですけど、最初夫に杉本をぼっこぼこに殴らせたいって言ってたじゃないですか。あれ、びっくりしたんですよ、そういうのが清水さんから出てくるとは思ってなかったので。
岩松 それは、近藤さんをぼっこぼこにしたいっていう願望なんじゃないの(笑)。
清水 違う違う、あれは、1回杉本がよけて、それでまた夫がかっとなって殴るってのがリアルじゃないかって言ってたんですよ。
岩松 でも、殴られて血を出させたいって言ってたよ。
清水 でも、却下されました。
色々意見を言われると、嫌になっちゃうってことはなかったの?
清水 その辺は、何本かやってきた経験というか、みんなを信頼してたということもありますけど、素直に聞けましたね。まあ、「なるほど」と素直に聞きながら、直さないところは直しませんでしたけど(笑)。
岩松 石川君と言ってたもんね、どこが変わったんだ?って(笑)。
石川 7稿目でしたっけ、「元に戻ってるじゃないか」って(笑)。
清水 でも、だんだんシナリオがよくなってるという実感はあったんでね。

キャスティング

清水 シナリオ会議と同時進行でキャスティングもしました。今回は、まず演技実績のある人にお願いしようというコンセプトで。
岩松 最初は今までの知り合いでって言ってたよね。
清水 このスタッフ布陣が固まる前はそうしか出来ないと思ってましたから。一応知り合いであて書きしてましたし。
でも、それじゃいけないって言われて、色々つてをたどってお願い行脚しましたね。世界を1つ広げようと。近藤さんを除くメインキャストの5人は、みんな初めての人ばかりでしたから、会ってじっくり話をしました。

左から、清水・近藤・金森 左から、清水・近藤・金森

キャスティング経過を改めて話すと、金森君は名古屋ビジュアルアーツの卒業生で名古屋で活躍する竹山尚希君の映画に出てるのを目に留めて誘った。
宮嶋さんは岩松さんの新作出演者で名古屋の事務所に所属する女優さん、松林さんも岩松さんの新作の主演。松林さんへのオファーは岩松さんと会いにいって、家に送る時に僕の車がガス欠して、松林さんに車押してもらったんですよね(笑)
岩松 そうだよ、信じられないよー、女優に車押させてどういう監督だって(笑)
  左から、山田・柴田・宮嶋・松林 左から、山田・柴田・宮嶋・松林
清水 それから豊田演劇界の重鎮、スペース21の山田幸治さんと劇団ドラマスタジオの柴田槇子さんは、堀さんの妹いっこさん経由でのオファーでした。2人は映像初めてだったけどさすがでしたね。
柴田さんは、本読みの時は「ちょっと舞台っぽいかなぁ」と思いましたけど、実際の現場に入ったらいいんですよね、存在感があって。
山田さんも、本読みの時どうしても声が通っちゃってて、でも別個でリハーサルさせてもらって「キムタクみたいにぼそぼそってしゃべってください」って言ったら、「ああ、そういうことね」ってすぐ理解してくれて。

撮影準備

清水 8月いっぱいで、シナリオとキャンティングをほぼ終わらせて、9月に本読みを1回やって、全体のリハーサルも1回やりました。本読みって初めてやりましたけど、やってよかったですね。
岩松 清水さん緊張してたでしょ?
清水 しましたよぉ、でも緊張を見せないようにしてました。
リハーサル風景。緊張を見せまいとしている清水さん(一番右)。
岩松 横で見てて、緊張してるのがおかしくて(笑)。
清水 本読みの時には、もろもろのスタッフも含めて20人くらい集まりましたからね。「ちゃんとやらないとまずいな」ってみんな思ったんじゃないかと思いますね。同時に撮影に向けての準備をしたんですが、これは各自が分業でやれて、効率的だったと思います。衣装と小道具は伴野さんにがんばってもらって。
伴野 衣装は、夏から冬にかけての話だから本当に多くて、さらに、夏のシーンも秋のシーンも冬のシーンも同じ日に撮るって撮影ばっかだったから、撮影での衣装スケジュールが間違ってないか心配で心配で何回もチェックしました。
それに、キャストの感情の流れとか、組み合わせとかも組んだから大変でしたよ。例えば、美奈子はかわいい感じの衣装から段々仕事が出来るようになってスーツになっていくとかね。でも、やっぱり衣装は少ない方がいいですね。次回作は、季節も1つでいきましょう(笑)。
清水 助監督としてははどうだった?
伴野 これは撮影の時ですけど、1回撮影場所の移動指示を間違えたんですよね。
  移動ミスした例の場所 移動ミスをした例の場所・・・
石川 あの時、岩松さんを古川さんがものすごく怒ってたよ(笑)
昔の古川さんだったら殴られとったよ(笑)
伴野 ふっ飛んどったね(笑)
清水 撮影、照明、音声の技術部は、岩松さん古川さん石川君にお任せでした。
石川君は、照明用の発電機の消音システムも考案したし。
清水 そう、特許取れますよ、石川システム。それに、石川君には、キャストスタッフの日程調整と撮影スケジュール組みしてもらうラインプロデューサーやってもらったし
一番大変で、面倒な仕事だからね。
石川 シーンが本当に多かったですよ。63シーンですからね。それに、夕方の撮影ってのがやっかいなんです。夕方って、1日のうちでちょっとしか時間ないですから、1日ワンシーンしか撮れない。
  夕方の空を撮影してます。
夕焼け空とワンシーンを撮った後、すぐ陽が暮れた
清水 M.I.F.では、自主映画にありがちな、監督が何から何まで全部やるってのはやめようって話してましたから、僕は比較的楽でしたね。だから、メインキャスト用に、登場人物のそれまでの人生経過とか感情の流れとかをまとめて書いてキャストに配れましたし。
岩松 最初、絵コンテは書かないって言ってなかった?
清水 いやいや、書かないんじゃなくて、シナリオに直接書きますって言って書いたら、岩松さんに「小さくて全然わかんない」って言われて書き直しました。書き直してもわからないって言われたけど(笑)。
ロケハンは、地元ですからシナリオの段階から大体想定してましたけど、1人でもちょこちょこ回って、撮影照明隊とも3日くらい回りましたけど、ナイトシーンの照明については悩ませました。
岩松 悩んだねぇ。
清水 「でも、ここで撮影したいんだもん」って言っちゃいましたからね。あれ、監督専念だったから言えちゃった。

撮影

清水 撮影は、10月〜11月にかけて7日間、週に1日、土日のどちらかでという撮影でした。ロケ地も豊田市が舞台の映画というのも1つのコンセプトでしたから、約20ヶ所と多かったんですが、雨もほとんど降らなくて、結果的には予定通りやれましたね。
でも、照明とか衣装替えとかで今までの自分の撮影からすると時間がかかるんだなぁって思いました。
  祭に遭遇 早朝、香嵐渓の足助祭
この後も季節柄、いくつか祭に遭遇する


火縄銃が間近で・・・!
撮影場所間近で発射される火縄銃
石川 大体1カット20〜30分かかりましたね。
伴野 やっぱり外の撮影が時間かかったって印象。車が通り過ぎるのを待ったりとか、天気待ちとか。
清水 使ったカメラはなんという名前だったっけ?
岩松 パナソニックDVX100A。
清水 24Pで撮ってます。フィルムっぽいのは、24Pなのと照明あててるのではどっちが大きいんですか?
岩松 24Pはフィルムと同じ1秒24フレームで撮れるからフィルムっぽくなるんだけど、でもそれ以上に照明の効果は滅茶苦茶大きいよ。
清水 古川さんのおかげですね。
もっと大きな声で言っといた方がいいんじゃないの(笑)
照明マン古川 古川さんのおかげです!
清水 古川さんなくしては、この映画は出来ませんでした(笑)。現場は自主映画としては大所帯でした。スタッフも常に10人くらいいましたし。
思いがけない人もがんばってくれたし。音声録音の竹内さんだけど。
清水 本当ですね、録音メインでやってくれましたからね、映画興味ないのに(笑)。屋上のシーンは、あれ加茂病院なんですけど、風がすごく強くて、演者に近づくために、汚いコンクリートに寝そべって音録ってくれましたからね。
  屋上での撮影風景 レフ板を当てる緑服は古川さん
あいにく、竹内さんが寝そべってる写真はなかった・・・。
撮影は、岩松さんに任せっぱなしだったの?
清水 今回は、サイズや構図は僕が決めさせてもらいました。迷ったときは、何テイクか違うサイズで撮ったりも出来ましたし。古川さんは撮影に関してはどうでしたか?
古川 ナイトシーン多かったよねぇ。でも、主人公の心理が、夜からデイシーンにパッと変わったときに、ふっと明るくなるねらいがちゃんと出てたのかな、と。
清水 それはもちろんねらいどおりですよ(笑)
今、気づいたねぇ(笑)
清水 照明は、デイシーンでも外の遠景以外は全部あてましたからね。
岩松 照明でいうと、バッテリーライトは感動だったね。古川さんが借りてきてくれたやつ。
  バッテリーライト使ってます。
右の方で役者の後ろから照明当ててます。写真では分かりにくいね。
清水 安く借りてきてもらって。2日借りましたね。あれがなかったら、街中のナイトシーンは撮れませんでしたね。
古川 室内は電源があるので3点4点で当てられたけど、室外は電源が取れなくて。
1つは発電機から取って、あとは車のバッテリーから取る予定だったけど、初日の橋のシーンから上手く行かなくてそれで急きょ借りてきた。本当は映画用の照明を借りてきたかったんだけどね。あれはどっちかというと報道用だから。
映画用だともっとたくさん照明あてられるから、もちろん絵もきれいに取れるし、役者のテンションも上がるしね。だから、撮影は楽しかったけど、ストレスもあったよね、照明が少なかったし、1人だったから、思ったような絵が撮れなくて。でも、スタッフの質は高かったと思うよ、みんな動きいいもん。
清水 古川さんの怒鳴り声が出た時は恐かったなぁ(笑)
岩松 梅坪駅で雨が降ってて、タクシーも待たせてて、照明を動かしたかったのに、みんな傘持ってたりして動けなくて、そしたら古川さんが「こら!早くしろー!」って。
清水 その時僕は「俺のこと怒ったんじゃないよね、俺じゃないよね」って聞こえない振りしてました(笑)
古川 一生懸命独り言で押さえようと思ってたんだけど(笑)
でも、古川さんの昔の血がそれだけ騒いだってのは、いい現場だったのかなって思うけどね。
古川 本当に、そうだよ。

ホスプロ

清水 撮影は11月15日にとりあえず終わって、それからポストプロダクションですが、まずは予告編と音楽を11月中で作って、編集は12月、大体3週間ぐらいでひとまず繋げました。合成シーンは岩松さんとデータをやりとりしながら。
岩松 夜の電車と車が交差するシーンは合成です。それから、ドアに電車の光が通り過ぎるカット、美奈子にヘッドライトがあたるカット、あとは映り込みとか、カメラの揺れなんかを細かく修正しました。さらに、最終的に全体を通して、彩色を落とすエフェクトをかけてます。
清水 年末ぎりぎりに、車が電車と併走するカットとか数カットを取り直しました。なので、撮影日数は、合計8日ですね。
それから、「映画製作っていくらぐらいかかるの?」ってよく聞かれるので製作費の話をしますが、今回は照明機材費が一番かかってます。

撮影機材の一部 
撮影機材一部。ほぼ照明関係

メインは岩松さん所有の機材とか視聴覚ライブラリーでレンタルしましたけど、細かいものを色々買って、それからバッテリーライトのレンタル料も含めて約10万円、あとは、キャストの出演料・交通費とか、テープ代とか、小道具代等もろもろ含めて全部で17万円かかりました。今回は、(財)あすてから補助金もらってますので、それでほとんど賄えました。
清水 最後に、とりあえず試写1号を見てという話を順番に聞きましょう。
伴野 後半がちょっとゆっくりかな。前半は早く感じたけど、後半になってゆっくりなペースになるのが予想してたのと違うかなと。
清水 助監督としては?
伴野 私は、映画製作にかかわって完成形を見るのは初めてだから、撮ってる時はよくわかんなかったシーンも繋がったらちゃんと話になってるな、と。
清水 すごい純粋な感想をありがとう(笑)
岩松 僕は、予告編を見た時に「うわー、きれいに撮れてるなー」って感動しましたね。ちゃんと照明あてるとこんなにきれいに撮れるんだって。それがまず一番の感想。本編を見て感じたのは、近藤さんをもうちょっときれいに撮りたかったな、と。
古川 細かいこと言いだしたらきりがないんだけど、もうちょっと出来てたらもっといい映画になったかなぁ、と。でもまあ、まあまあの出来だと思いますよ。
そういえば、映画祭スタッフの伴野2号さん(助監督の伴野とは別人)に1号試写見せたらすごくよかったって言ってたよ、女性の方が感情移入できる映画なのかもしれない。
石川 室内の色がすごくよかったですね、杉本の自宅のシーン。あと、朝日とか。あれは、映像マジックですね。
清水 撮影は徹底してましたよね、岩松さん、ゲイン上げないし。
古川 絶対上げなかったもんねー。
岩松 カメラのゲイン上げるとノイズが出ちゃうから、完成度が下がるから。古川さんが照明足りないって言っても、清水さんがじゃあゲイン上げましょうよ、って言っても絶対上げなかった。だから、あの橋のシーンでも古川さんに遠くから照明あててもらってね。
  遠くから当てる照明
石川 ただ、音はまだまだだなーって思いましたね。撮影当初は役者さんも慣れてないからセリフも聞き取りにくいところもあるし、こっちも慣れてなかったし。発電機の音が結構入ってるのもショックでしたね。
岩松 その辺は、よくないところをリストアップして、分析してストックしておくことが大事だね。
石川 でも、今回の製作を通して、スタッフもキャストも成長したなって思いますよ。撮影の最後の方で、夜遅いのに、もう1シーン撮っちゃいましょう、って機運が自然とみんなから出てきたんですよね。最初の内はなかったですもん。どこかで変わったんですよ、それはすごいなって。
今回は、初めて映画を撮ったなぁ、って思ったね。今までも撮ってたんだけど、今まではビデオだったな、と。あとは、最初企画とかシナリオを読んだ時に、「なんで『8月じゃないみたい』をまたやるの?」って思ってて、清水君が何をやろうとしてるのか疑問だったんだけど、完成形を見て、「いや、やってよかったんだ」と納得したというか。
近藤 私は、自分の顔とか演技とか、他の経験ある役者さんたちの足をひっぱってないかが心配で、まだ作品を客観的には観れないなぁ。
  監督の演技指導を受ける役者さんたち
清水 足をひっぱてたと思う人手を挙げて(笑)
近藤 みんな目をつむって、誰にも言わないから(笑)
岩松 監督は?
清水 僕は、案外ちゃんとメロドラマになったなー、というのが最初通して観た時の感想です。当初は、もっと淡々とした、なんに起こらないというか、渋い映画になるだろうけど、わかってくれる人だけわかってくれればいいや、なんて気持ちも実はあったんだけど、出来上がりは、ストーリーで見れるなって感じがしましたね。ドラマとして見れるというか、広く受け入れられそうな作りを良くも悪くもするんだな俺って、と思うところがありました。
古川 そこがよかったと思うよ。
清水 この前、シナリオ読んでない女の子にも観てもらったんだけど、テーマとかわかった?って聞いたら「なんかよくわかんなかったけど、でもすごくよかったですよ」って言われて(笑)。
監督としてはこういうテーマがあったんだけどって言ったら「ああ、なるほどそういうことですね」って。でも、それはいい観られ方をしてるかなって思ったんです。
岩松 出来はどう思うの?
清水 出来を左右するのは、いかに丁寧にやれるかだと思うんですけど、シナリオに関してはやれたかなと思います。今のところ間違ってたと思うところはない。キャスティングとロケ地もほぼ満足してます。
ただ、撮影に関しては、やっぱり時間に追われちゃったですかね。演出上「ここ間違ってるなー」ってシーンもたくさんあるし。でも、全体的には伝えたかったメッセージは出せたかなと、そこからさらに観る人に問いかけるところにも少しは届いたかなと思ってます。
だから、もう観た人も、これから観る人も、この映画を観て素直にどう感じたかどんどん感想を送って欲しいですね。

編集に関しては、時間がなかったので映画祭上映版は一番長いヴァージョンになると思うので、みなさんの感想を聞きつつ、もう少し詰めるように再編集して色々コンテストにも出品していきたいと思ってるので、観た人はスタッフの一員になったつもりで意見を送って欲しいです。すぐ反映して直しますから。
  キャストとスタッフ集合!

ご意見・ご感想お待ちしております。キャスト・スタッフ一同。
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